我が国は、「平和協力国家」として、国際社会の平和と発展のために積極的な役割を果たすことが求められている。特に、これまで我が国が主導してきた「人間の安全保障」の理念を実現するため、「平和構築人材の育成・派遣」において世界に貢献することが重要である。
具体的には、停戦監視・治安の確保や保健・衛生等の人道支援のみならず、警察・消防・検察・司法分野を含む行政機構整備等を通じた国づくり、そして基礎インフラ整備・雇用開発などの復興開発にわたる、広範かつ継ぎ目のない長期的な支援ができる人材育成及び派遣体制の構築が課題である。
一方、欧米諸国においても、軍だけでなく、幅広い分野にわたる文民の役割が強調され、人材育成と派遣の体制が急速に強化されてきている。日本は、これまで国際社会の平和と安定の実現に向けて、国連PKOを始め各種の国際平和協力活動に参加するなどの努力を行い、国際社会からも評価されてきているが、今後、文民分野についても強化し、バランスのとれた人材育成・派遣体制の構築が我が国の総合的外交力強化の観点からも重要である。
今こそ、日本が持てる力を総動員して国際社会の平和と安定に貢献できるよう、我が党は、平和構築分野の人材育成・派遣と総合的外交力強化に向けて、以下のとおり提言する。
1.基本方針
(1)平和構築に向けて、自衛隊と文民の最適な組み合わせが可能となるよう、縦割り行政の弊害を排除して関係省庁等の連携体制を強化し、「全政府的アプローチ」「統合的アプローチ」を推進する。
(2)現地政府、関係国際機関現地事務所、NGO等との意思疎通を強化し、現地からのニーズの汲み上げを促すような体制を構築する。
(3)日本のみならずアジアを中心に平和構築を担う人材育成等を推進することを通じて、平和構築支援で世界をリードすることを目指す。
2.人材育成の推進
(1) 警察・消防・検察・司法分野や保健・衛生等の人道支援分野については、警察庁、消防庁、法務省、厚生労働省等の担当省庁が独自又はJICA等のスキームを活用して人材育成の国際協力を既に進めており、今後ともその拡充強化が重要である。
(2) 一方、横断的取り組みとして、平成19年度からパイロット事業が始められている外務省の平和構築人材育成事業の本格化に際しては、研修員数を、現行の30名に対し、2〜3倍に増加することを目指す。又、平成22年度開所予定の防衛省国際平和協力センター(仮称)についても、関係省庁との連携を図る。現地への派遣を前提としたこれらの研修に関係省庁の行政官を参加させ、有能な日本の行政官のノウハウを国家機能構築支援に効果的に活用することが重要である。
(3) 研修に際しては、各種の専門家が平和構築の現場で各々の技能や経験を生かすことができるよう、安全確保・治安分析・危機管理能力の向上に資するような専門研修も充実させる。
(4) 人間の安全保障を確立し、持続的なものとするために、個別の対象国・地域における平和構築の取組の全体像を把握し、異なる諸活動間の調整を行うことができるような「平和構築戦略家」を、外務省、防衛省、JICA等の関係機関で中長期的に育成する。
(5) 各省庁間の連携については、平成18年12月に内閣官房に設置された「平和構築分野の人材育成に関する関係省庁連絡会議」を活用する。
3.要員派遣の拡充
(1)平和構築の現場で文民の人材が不足している関連分野、特に民間の専門家等では対応が困難な各種行政機構整備等の分野(警察・消防・司法・各種行政等)について、関係行政機関の協力を得て、文民の長期・短期の派遣拡充に向けて努力する。
(2)積極的な要員派遣を行えるよう、情報収集や支援体制など要員の安全対策に配慮する。また、要員の派遣に当たっては、現地のニーズ、情勢と我が国の有する能力・特性との均衡を踏まえ、実効性のある支援となるよう配慮する。
(3)関係行政機関職員の積極的な派遣を行うことができる体制を整えるためにも、外務省の定員数の増強を図る。
(4)治安状況等により現地への派遣が不可能な場合には、本邦における研修の受入等を十分に拡充して対処する。
(5)個別の国・地域への支援に当たっては、人間の安全保障の視点に立って、自衛隊の派遣から二国間・多国間のODA、NGOの活動支援に至るまで、様々な主体による支援を有機的に組み合わせ、平和構築プロセス全体を見渡して、現場のニーズに則して複数の分野にまたがる形で長期にわたり継続的な支援が行われるよう確保する。
4.NGOの効果的活用
(1)NGOによる平和構築関連事業は、草の根のきめ細かな支援を行い得るものであり、今後とも積極的に助成し、連携を推進する。その際には、事業の特性を踏まえて、定量的に成果を測り難い支援分野・内容についても、人件費などソフト面を含め経費が充当できるよう十分に配慮する。
(2)ODA事業費の少なくとも20%を人間の安全保障の理念に基づく取組のために引き続き確保するとともに、その少なくとも5%程度を目標に日本のNGOの活動を支援する。こうした取組を通じて、平和構築支援を行うNGOの職員数が増えれば、平和構築分野で育成した人材の活躍の場を提供することとなり、人材の裾野を広げることにもつながる。
5.アジアやアフリカなど他の支援国・紛争国の人材育成・国際協力
(1)外務省、防衛省等の平和構築人材育成事業等を通じて、日本人のみならずアジア・アフリカ諸国の平和構築人材の育成を推進し、広く国際社会の平和構築の基盤となる人材育成に寄与することを目指す。
(2)平和維持活動に参加する要員を訓練するためのアジア・アフリカ諸国のPKOセンターに対しても、資金協力や自衛官の講師派遣等を通じて、統合的アプローチが効果的に行われるように機能強化を支援する。
6.外交実施体制の強化
(1)上記を実現するためには、我が国自身の総合的外交力を強化することが重要である。現地からのニーズの汲み上げを促すためにも、在外公館網の整備が急務の課題であるところ、大使館については今後10年間で150大使館体制との目標を早期に実現する。
(2)外務省の職員数について、今後10年間で定員2000人純増の目標実現に向け、外交実施体制のマンパワーを着実に増強する。
(3)厳しい環境で働く在外職員が誇りを持ち、かつ安心して外交活動に専念できる勤務環境を整備するため、厳しい勤務地における治安・医療事情、子女教育の困難などに適切な配慮を払う。
(以上) |