5月6日 子どもたちへのメッセージ(第十九回)の収録を終えて

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第十九回の放送では「教育制度」を取り上げました。最近では橋下徹大阪市長が一定レベルに達しない小中学生の留年を提案することで大きく話題になりましたが、実は欧州を主とした世界では留年は珍しい事ではないといいます。それは一体どうしてでしょうか。また、教育制度を改善するにあたって重視すべき点とは何なのでしょうか。

■教育制度における様々な問題
皆様、こんにちは。参議院議員の浜田まさよしです。第十九回目にあたる今回の放送では「教育制度」をテーマにお話しします。

現在の日本では教育課程の段階別にそれぞれ問題を抱えています。平成に入り増えてきているのは「いじめ」、「不登校」、「校内暴力」、これらは中学校で大きく問題になっています。一方で小学校段階でも学習塾通いが一般化したことにより、学校の授業がつまらなく感じる子どもとついていけないと感じる子どもの二極化が、また、高校では不登校と中退という新たな問題が浮上しています。これが後の若者の引きこもり、ニートの原因となっているのです。そしてこのような様々な問題に上手く対処できずに立ち尽くす教師という実態もあります。戦後教育が始まって65年、ここでもう一度、日本の教育の在り方を国民的に考え直す時期に来ているのかもしれません。

■現在の教育課程について
教育課程の基準となる「学習指導要領」はほぼ10年ごとに改訂され、平成21年改訂では、それまでのいわゆる「ゆとり・総合学習」が見直され、授業時間の増加・学ぶ内容の充実化が図られました。昨年度の小学校に続き、本年度から中学校においても新学習指導要領が全面実施されます。理数科目、保健体育の授業時間が1割アップ、教科書も3割ほど分厚くなります。

しかしこのような教育の体制変行だけでは足らない、と専門家である水谷さんは話しました。現在の日本の学習制度というのは、例えばイギリスやフランスとは違い、完全な学年制です。理解していようがしていまいが、義務教育なので1年で必ず学年が上がってしまいます。この教育制度が問題であり、変えるべきだと水谷さんは指摘します。

■「留年」という選択
最近ではこのような従来の教育制度を変えるために、大阪市の橋下徹市長が、小中学校の留年を検討しているという発言が大きく報道で取り上げられました。

学校教育法は「原級留置」と表現されますが、制度上では可能です。しかし文科省はこれをほとんど使ってきませんでした。過去の例として1990年代に神戸で小学校四年生の女の子の年間出席日数が34日間しかない状態だったこともあり、保護者が「留年させたい」と学校側に申し出ました。これを学校が無理やり上の学年に上げさせてしまい裁判になりましたが、裁判所はこの進級は妥当と判断しました。一方、世界ではこのような出来事は異常とされます。2009年のOECDの調査によると15歳までに留年を経験した子どもたちの割合は加盟国で13%、最も低いのが日本で0%、最も高いのがブラジルで40パーセント、第2位がフランスで37%の子どもたちが留年を経験しています。あらためてこのデータを見ると日本も考えを変えていく必要があるのではないでしょうか。

■子どもたちの希望をベースに
教育し直す機会となるこの原級留置という制度ですが、何より重視すべきは「本人の希望」です。橋下徹大阪市長が言ったのは「レベルに達しないから自動的に留年」というのではなく、これは元々教育評論家の尾木直樹さんが提言した「本人の希望が前提としての留年を」という話に橋下市長が同調したことから話題になりました。ここで東京のある中学校で留年についてアンケートを取ると、中学生の8割は「嫌だ」という結果がでています。そのような意味では子どもたちの希望をベースとした上で、学ぶ環境をどう作るかを併せて行わないとおかしくなるかもしれません。

ここで水谷さんからせめて中学生が小学校の勉強を、それも塾とか家庭教師ではなくて、無料で公的に放課後に受けられる体制作りが必要だと強く指摘されました。これは重要な意見で、先ほど触れた「原級留置」については文科省自体が消極的な対応を取る一方で、統計上不登校を除いた病気などで長期欠席している子どもたちは小学校・中学校でそれぞれ二万人ほどいる実態があります。この子どもたちは長期欠席して学年が上がるか上がらないか悩むでしょう。その悩んだ時に自分はどうしたいかと、そういう希望に最低限教育側は応えるべきだと思います。

■「留年」という選択
留年が実地された場合にそのことが原因でいじめにつながることはないか不安に思う人もいるのではないでしょうか。

先ほどフランスでは留年が多いという話をしましたが、15年前私は隣国スイスのジュネーブに滞在していました。子どもが3人いましたが、子どもたちは学校の授業によってはついていけないから遅れた級となったり、逆に飛び級していましたが、向こうの学校は子どもたちに適した学年ということを徹底していたこともあり、別にいじめはありませんでした。

水谷さんも話されていましたが留年してでもいいからちゃんとした知識を身に着け、社会に出ていってほしいと、そういう国民的な意識が作られ、またその子たちをリカバーできるような体制ができるかどうか今後必要になってくるのだと思います。

「子どもたちのメッセージ」は毎週日曜日17:25~40 ラジオ日本AM1422Hzで放送中です。(→番組ホームページ

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