新ハマダレポート Vol.22.ーリスクコミュニケーションについて対談(その3)ー

新ハマダレポート Vol.22. 2023.10.9

ーリスクコミュニケーションについて対談(その3)ー

 8月6日に開催された、高村館長(東日本大震災・原子力災害伝承館)と、リスクコミュニケーションを中心とした対談について、第3回目のご報告です。

 2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く原子力災害。

放射能の恐怖は、未曽有の大規模・長期の「避難者」を生みました。

「自主避難者」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 政府の発令した避難指示区域以外であっても、自らの判断で避難をされた方々のことで、事故後増え続け、福島だけでも、避難者全体のおよそ1/3にあたる約5万人にも上りました。

 これは、ある意味で、政府のリスクコミュニケーションの失敗によるものです。「直ちに健康に影響はありません」を繰り返すだけの当時の官房長官の対応は、放射能の影響を過大に喧伝する一部の学者・政党の声にかき消されていたのです。

 事故後の5月、福島市、郡山市などの中通りで懇談会を繰り返し、若いお母さん方の切実な声を聴き続けました。

「ネットを見るとおどろおどろしい情報ばかり。私はどうなってもいいのです。この子にどのような影響があるのでしょうか!!」

 色も匂いも音もない放射能の不安から、子どもたちやお母さま方をどう守ればいいのか・・・。

「ガラスバッジを子どもたちに配れないか?」同行していた公明党地元議員のつぶやきです。

 ガラスバッジとは、放射線技師が胸につけている個人累積放射線量を計測するバッジで、当時、ある町が大学と共同でモデル事業を始めようとしていました。

 福島での懇談会から東京に帰る新幹線の中で要望書を書き上げ、翌日、総理官邸で官房副長官に会い、緊急要望をしました。

「放射能は、色も匂いも音もありませんが、測ることができます。福島の15歳以下の子どもたち28万人と妊婦さん2万人に、個人累積線量を計測できるガラスバッジを配布し、回収・データ公表することで、不安を取り除いてください!」

 この要望は、7月の補正予算に急遽盛り込まれ、9月から福島の全ての子どもたちと妊婦さんの被ばく線量の実計測が始まったのです。

 実際に計測してみると、「戸外8時間・室内16時間、建物構造別遮蔽効果」の計算式により政府が公表していた被ばく線量よりもはるかに少ない値だとわかり、多くのお母さま方は胸をなでおろしました。

 リアルな科学的データのないリスクコミュニケーションでは、安心を得ることはできないことを痛感した出来事でした。

 次号は、政権交代後、いよいよ福島担当の復興副大臣時代に取組んだリスクコミュニケーションについてです。

P.S.9月29日付け毎日新聞夕刊コラム「はじまりのうた」で、処理水に関する私のインタビューが掲載されました。ご参考まで。

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